ドジョウ or カラドジョウ
| ドジョウ |
口髭が瞳に届かない |
| カラドジョウ |
口髭が瞳に届く |
両種の決定的な特徴として、側線・縦列鱗数(ドジョウ141〜185枚、カラドジョウ106〜135枚)、
尾柄部縁辺上部の尾鰭前部鰭条数(ドジョウ14〜19本、カラドジョウ31〜39本)があります。
また、各部の長さをノギスで測り、複雑な計算式に当てはめ、判別する方法もあります。
これらの比較は、魚を標本にして顕微鏡で鱗を数えたり、計測と計算する必要があり、容易ではありません。
そこで正判別率は下がりますが、専門的な知識が不要で、採集時すぐに簡易同定できる方法として、口髭と瞳の関係を記します。
| ドジョウの口髭 |
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口髭を後側に倒しても瞳に届かない。カラドジョウと比べて体高と尾柄高が低い。 (京都府産)
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| カラドジョウの口髭 |
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口髭を後側に倒すと瞳に届く。ドジョウと比べて体高と尾柄高が高い。 (濃尾平野産)
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瞳(中心)と第1髭(上唇最上部にある対の口髭)の長さをA、第1髭基部から先端までの長さ(第1髭長)をBとします。
ドジョウはAが長く、カラドジョウはBが長いです。
ここを見るだけで、正判別率は9割以上だと思いますが、
口髭が欠損していたり、両種の交雑個体などで、例外も出るため、
少しでも違和感のある個体は、別の場所も見る必要があります。
| 幼魚以下 |
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幼魚以下にも口髭と瞳の関係は使えます。 (濃尾平野産)
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カラドジョウはドジョウよりも太短いため、各部の長さを比較することで、両種を識別することは可能ですが、
これは成魚に限ったことで、幼魚以下に当てはめることは出来ません。
特に背鰭より後方は、成育状況に伴って伸長するため、成魚と幼魚以下では、同じ個体でも計数が大きく変わります。
また、尾鰭基底上部の暗色斑はドジョウ(有る)、カラドジョウ(無い)とされることもありますが、
これは両種とも例外が多く、とても使い難い特徴です。
しかし、瞳と口髭の関係は、成魚と幼魚以下も同様な傾向があり、判別に使い易い特徴だと思います。
日本産ドジョウ属
ドジョウ科 Cobitidae
└シマドジョウ亜科 Cobitinae
└ ドジョウ属 Misgurnus
├ ドジョウ種群(クレードA) ヨーロッパ系 Misgurnus sp.
├ ドジョウ種群(クレードB) Misgurnus anguillicaudatus (Cantor, 1842)
│├ 中国系 Misgurnus anguillicaudatus anguillicaudatus (Cantor, 1842)
│├ 日本系 Misgurnus anguillicaudatus rubripinnis (Temminck et Schlegel, 1846)
│└ 韓国系 Misgurnus anguillicaudatus subsp.
├ ドジョウ種群(沖縄島集団) Misgurnus sp. OK
├ ドジョウ種群(西表島集団) Misgurnus sp. IR
├ カラドジョウ種群(グループ1) Misgurnus dabryanus (Guichenot, 1872)
└ カラドジョウ種群(グループ2) Misgurnus sp.
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科名 亜科名 属名 種小名 亜種小名 命名者名 命名年
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| 種 | 和名 | 分布 | 日本 | 形態的特徴 |
| 1 | ドジョウ種群(クレードA) | ヨーロッパ系 | 石川県・千葉県以北の一部 | 在来 | 頭長が短く、体高が低く、尾柄長が長い。 |
| 2 | ドジョウ種群(クレードB) | 中国系 | ほぼ全国(琉球諸島を除く) | 外来 | 尾柄長が頭長より短く、背鰭基底長が長い。 |
| 日本系 | 全国(琉球諸島を除く) | 在来 | 尾柄長が頭長より長く、背鰭基底長が短い。 |
| 韓国系 | 栃木県の一部 | 外来 | 日本系に似る? |
| 3 | ドジョウ種群(沖縄島集団) | 沖縄島の一部 | 在来? | 口髭長がクレードBとカラドジョウ種群の中間。 |
| 4 | ドジョウ種群(西表島集団) | 西表島の一部 | 外来? | 口髭長がやや長い。 |
| 5 | カラドジョウ種群(グループ1) | ほぼ全国(琉球諸島を除く) | 外来 | 口髭長が長い。 |
| 6 | カラドジョウ種群(グループ2) | 愛媛県の一部 | 外来 | 口髭長が長い。 |
日本産ドジョウ属は、分類学的に混迷しており、上表は暫定的に整理しました。
これまで記してきたドジョウはドジョウ種群(クレードB)、カラドジョウはカラドジョウ種群(グループ1)です。
分類目的ではないため、仔細は割愛しますが、一般に地味な体色で、田んぼにいる、にょろっとした「どじょう」には、6種3亜種(8種類)もいるのです。
そのうち5種2亜種(5種類)が、安易な放流起源と思われる、外来ドジョウ類もしくはその疑いがあります。
山形県では Misgurnus mohoity (Dybowski, 1869) に似た個体も確認され、外来ドジョウ類は更に増える恐れもあります。
| ドジョウ種群(クレードB) |
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日本産ドジョウ属は模様で同定することは出来ません。
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ドジョウ種群(クレードB)をカラドジョウと誤同定されて、インターネットに載せてあるのをしばしば見かけます。
たいてい体高が高かったり、体に斑点が多かったり、大きな雌だったりすることが多いです。
まずは口髭長を見て下さい。それでも何か違和感があったら、別の特徴を計数や計測する必要があります。
ドジョウ種群とカラドジョウ種群は交雑することが知られており、
某Webサイトで「ドジョウとカラドジョウの区別」とされているドジョウの画像は、
交雑個体の疑いが強いため、比較利用には注意が必要です。
| ドジョウ種群(クレードB) 日本系 or 中国系 |
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真横からの写真を撮ればある程度の判別は可能です。 (三重県産)
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九州以北で最も多い「どじょう」は、ドジョウ種群(クレードB)の日本系と中国系です。
尾柄長(臀鰭基底後端から下尾骨後端中央の距離)が日本系は長く、中国系は短い傾向があります。
頭長(上顎前端から鰓膜後端の距離)と比較すると写真のようになります。
但し、日本への中国系の放流によって、両系は交雑している恐れが高く、典型的な個体以外の同定は難しいと思われます。
三倍体ドジョウとされる個体は、ドジョウ種群のクレードAとクレードBの交雑から、発生することがあるようです。
「どじょう」は食用・観賞用・釣餌用・魚餌用などとして売られていますが、何らかの理由で不要になった個体は、自然へ投棄されていると想像しています。
有機・無農薬農法や鳥餌として水田へ撒いたり、河川清掃活動のイベントとして放流することもあるようです。
それらは本当にドジョウ種群でしょうか。全国各地でカラドジョウ種群が見つかっています。
カラドジョウ種群が日本のドジョウ種群を駆逐したり、雑種化する恐れがあります。また、ドジョウ種群であったとしても中国産や韓国産かもしれません。
日本産であっても放流された個体は、その水域にとっては外来魚で、不必要な生存競争や病原体の伝播、交雑によって地域固有の遺伝子が失われます。
「どじょう」の放流は自然にとって、百害あって一利無しで、止めるべきです。
参考・引用文献 ※不備がある場合は改めますのでお手数ですがご連絡ください。
□ 薫仕・谷口順彦・石田力三 (1999) 茨城県東連津川で見られたドジョウの2型. 魚類学雑誌, 46(2): 83-90.
□ 小出水規行・竹村武士・渡部恵司・森淳(2009)ミトコンドリアDNAによるドジョウの遺伝特性-チトクロームb遺伝子の塩基配列による系統解析-. 農業農村工学会論文集, 259:7-16.
□ 小出水規行・森淳・竹村武士・中茎元一・水谷正一・西田一也・竹村武士・渡部恵司・朴明洙(2010)栃木県におけるドジョウの遺伝的クレードの解明. 農業農村工学会全国大会講演要旨集, pp.860-861.
□ 小出水規行・竹村武士・渡部恵司・森淳・西田一也・中茎元一・水谷正一(2011)形態データを利用したドジョウとカラドジョウの判別式. 農業農村工学会全国大会講演要旨集, pp.138-139.
□ 清水孝昭・高木基裕 (2010) 愛媛県に侵入したカラドジヨウ集団内に見られた起源の異なる二つの遺伝子系統 魚類学雑誌 57: 125-134.
□ 清水孝昭・鈴木寿之・高木基裕・大迫尚晴(2011)沖縄島と西表島より得られたドジョウの形態的・遺伝的特徴. 日本生物地理学会会報, 66:141-153.
□ 吉郷英範 (2011) 広島県瀬野川水域で採集されたカワリヌマエビ属の形態と釣餌用エビ類に混入していた魚類. 比婆科学, (239): 9-29, pl. 1
□ 吉郷英範 (2007) 山口県東部で確認された外来と考えられるドジョウ属(コイ目ドジョウ科). 比婆科学, (223): 7-20, pl. 1
□ 国立科学博物館, 魚類写真資料データベース. http://research.kahaku.go.jp/zoology/photoDB/, (参照 2012-02-20).
□ 荒井克俊 (2009) 自然クローン・倍数体を遺伝資源とした魚類育種技術の開発に関する研究. 文部省科学研究費補助金研究成果報告書, 研究課題番号:18380108
□ Morishima, K., Y. Nakamura-Shiokawa, E. Bando, Y. J. Li, A. Boroú, M. M. R. Khan & K. Arai. 2008. Cryptic clonal lineages and genetic diversity in the loach Misgurnus anguillicaudatus (Teleostei: Cobitidae) inferred from nuclear and mitochondrial DNA analyses. Genetica, 132: 159-171.
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